<母子3人殺害>メディア規制の標的が取材源へ…捜査に懸念
5月2日21時57分配信 毎日新聞
公権力によるメディア規制の標的が取材源に向けられ始めている。奈良県田原本町の母子3人放火殺人事件で、長男(18)=当時高校1年=の調書を単行本の著者に見せたとして刑法の秘密漏示罪に問われ公判中の精神科医、崎浜盛三被告(50)が、3日の憲法記念日を前に毎日新聞の取材に応じた。無罪を主張する崎浜被告は「(萎縮、い、しゅく)効果を狙った捜査」と取材源に向かう捜査に懸念を示した。【臺宏士、阿部亮介】
−−公判は、長男に殺意がないことを訴えるための情報提供だという主張ですね。
◆少年事件は特に情報が少ない。長男に殺意のないことを示せるのは多分私だけだ。少年を見捨てることは、日常診察する患者さんにも不誠実なことになるのではと感じた。
−−奈良地検は単行本の著者を不起訴とし、情報提供者の崎浜さんだけを起訴しました。
◆検察にとって好ましくない情報提供をした人に対する委縮効果を狙った捜査だと思う。こういう事件が起きると、一般的には委縮するだろう。普通の人は、著者や出版社が罪に問われず、取材協力者だけが起訴されることについて疑問に思うのではないか。いびつな事件だ。
−−取材者側への要望はありますか。
◆重要なお話をするわけです。情報提供する側にも、何らかの理由で自分が情報源であることが明らかになったらとの覚悟はもちろんあります。しかし、特定されないよう一層の配慮をしてほしい。
−−自衛隊官舎や民間マンションにビラを配布しただけで起訴される時代です。
◆刑事事件の被告になるというのは、とんでもない悪い人間だと思っていた。今の日本は捜査当局が捕まえようとすれば、いつ誰でも捕まえられる社会ということを実感した。
◇「業務上知り得た秘密」と捜査対象に
報道機関に情報提供したことが、「業務上知り得た秘密」を漏らしたとして捜査対象となった事件が最近目立ち始めている。
今年3月、防衛省情報本部所属の航空自衛隊1等空佐が自衛隊法の秘密漏えい容疑で書類送検された。1佐は、中国海軍の潜水艦が南シナ海で火災を起こし航行不能との情報を、読売新聞記者に提供したことが防衛秘密の漏えいに当たるとされた。自衛官が報道関係者への防衛秘密漏えいを理由に送検されたのは初めてだ。
また、05年には、神奈川県警警部補が詐欺事件捜査で知った人物の氏名などを週刊誌記者に提供したとして、地方公務員法(守秘義務)違反容疑で書類送検された(その後、起訴猶予処分)。警部補は、停職処分後に依願退職。一方、記者は事情聴取を拒否した。
いずれの事件でも報道した読売記者、週刊誌記者は立件されていない。
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